エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「頭を打って一時的に記憶がないだけだよ、きっと。波多野のこともすぐに思い出すって」
沖さんは隣に座った私を盛んに励ます。
しかし、素直にその言葉を受け取れない。
両親も沖さんもわかるのに、この二年、一番近くにいたはずの私の記憶がないなんて。
それから沈黙が続き、十分ほどして女医さんが入ってきた。
「失礼します。今後、浅海さんの治療を担当する橋本(はしもと)です。浅海さんの検査結果を拝見しましたが、外科的には問題ありません」
橋本先生は話しながら、テーブルを挟んだ向かいに座る。
「お付き合いされていた方の記憶だけがないとお聞きしましたが……」
先生は私に視線を送り、優しい口調で言う。
「彼女は波多野と言います。私は浅海と彼女の同僚で沖です」
動揺で言葉が出てこない私の代わりに、沖さんが話を進める。
「そうでしたか。波多野さんが浅海さんと出会われたのはいつですか?」
「二年半ほど前に、同じ部署に配属されたときです」