エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
「浅海さん、お仕事はなにを」
「レーブダッシュというスポーツ用品メーカーの営業統括部にいます」
淀みなく言葉が出てくるのに、私の存在だけがなかったかのように消されている。
「なるほど。少し混乱されているようですね。今日はゆっくりお眠りください。痛いところはありませんか?」
「はい、大丈夫です」
先生に返事をした宏希さんは、もう一度私と視線をあわせたがその瞳は無反応で、まるで代わり映えのない景色でも見ているかのようだった。
「波多野さん、少しよろしいですか?」
「……はい」
私は先生に呼ばれて病室をあとにした。
もう宏希さんの顔を見ていられなかった。『あなたは誰?』と言いたげな瞳がつらくて、とても無理だった。
「波多野、俺も行く」
沖さんも付き添ってくれると言う。
心配しているのだろう。
先生はカンファレンスルームに私と沖さんを案内して、別の先生を呼びに出ていった。