エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
彼は悲痛の面持ちで私の手を握り、「すまない」と声を振り絞る。
「謝ってもらうことなんてなにもありません。私も賛成です。お父さまにもお母さまにも、和宏を愛してもらいたいです。私も和宏も宏希さんについていきます」
彼がしたいようにすればいい。
「忍……ありがとう」
彼はすこぶる優しい笑みを浮かべたあと、私をギュッと抱き寄せた。
宏希さんが仕掛けた揺さぶり作戦は、会社中に衝撃をもたらした。
というのも、求心力と行動力が抜群の宏希さんのことを上層部も認めていて、彼が抜けることによる損害を危惧しているのだ。
今やレーブダッシュを中心となって支えている彼が、懐刀の沖さんを連れて出ていくとなれば、戦々恐々とならないわけがない。
噂は流れているものの涼しい顔をしてなにも言わない宏希さんにしびれを切らした佐藤さんが、沖さんに接触してきたのを偶然目撃してしまった。
しかし、沖さんもつわもの。
「さあ、どうでしょう」とニヤリと笑うだけで、不安をあおる。