エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

宏希さんがこんな作戦に出たのは、社長を交渉のテーブルにつかせるためだ。

私との結婚を宣言してから、話しあうことすらままならない状態をなんとかしたいという強い想いのあらわれだった。



そして二月の終わりの土曜日。
宏希さんはとうとう実家に呼び出された。

私は和宏を母に預けて、一緒に行くことにした。

和宏が母と会うのはまだ三度目だったが、さすがは育児経験者。
すっかり彼の心をつかみ、仲良くなっている。


必ず三人の未来を勝ち取るという強い気持ちで宏希さんの実家に向かったが、緊張しないわけにはいかない。

宏希さんが運転する車の助手席で、顔が引きつるのを感じていると、「忍」と優しい声で呼ばれた。


「はい」
「俺……今度こそ守るから」


ハンドルを握り前を見据えたままの彼だけど、その声は凛としていて確固たる決意を感じる。


「はい。信じてます」


彼のたったひと言で、ピリピリしていた気持ちがすとんと落ち着いた。
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