エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~

土曜のせいか朝からお客さんが多い。

必死に接客をこなしていたが、なぜか頭がふわふわする。
こんなことは初めてだ。

けれどもその日、午前中だけでレーブダッシュの靴が四足も売れてうれしかった。


十二時きっかりに仕事を終えて、自転車で家路を急ぐ。
その間も自分の体が自分のものではないような不思議な感覚に襲われていた。

アパートの前に到着すると、黒の高級車が停まっている。


「宏希さん?」


階段を二階まで駆け上がったが、息が切れてクラッとした。

なんとか部屋までたどり着き鍵を開ければ、大きな男性物の靴がそろえて置いてあり、和宏の笑い声が広がっている。


「ママ!」
「どうして……」


そこにいたのはやはり宏希さんだ。


「勝手にごめん。和宏くんひとりだとやっぱり心配で」


彼が立ち上がって私のほうに歩いてきたのが見えたものの、天井がグルグル回りだして靴を脱ぐ前に倒れ込んでしまった。


「忍! どうした?」
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