エリート御曹司は溺甘パパでした~結婚前より熱く愛されています~
すぐに宏希さんが抱きかかえてくれたが、目が回って吐きそうだ。
「和宏くん。ママを病院に連れていく。和宏くんも靴履いて」
「うん」
「忍。頑張れ」
忍って呼んだ?
私のことをあの頃と同じ呼び方で……。
意識がもうろうとしているのに、それがうれしいだなんて。
宏希さんは私を抱き上げ、和宏についてくるように言い聞かせている。
それからはぷっつりと記憶が途絶えた。
鼻孔を刺激するような消毒の匂いにふと目を開けると、真っ白な天井が飛び込んでくる。
「あれ……」
「よかった。気分はどう?」
私の顔をのぞき込んだのは宏希さんだった。
どうやらここは病院らしい。
隣に温もりを感じて視線を向けると、同じベッドに潜り込んだ和宏が眠っている。
そして左手には点滴がつながっていた。
私……倒れたんだ。
「大丈夫です」
「過労だろうって。ずっと顔色が悪いと思ってたんだ。腕もこんなに細くて、折れてしまいそうだ」
彼は私の左手を握る。