リペイントオレンジ🍊
我ながら何を変なポイントで悩んでるんだか。
きっと菅野さんのことだから、私からのメモなんてサラッと目を通したら捨ててしまうのに。
そう思いながら、ペンを走らせる。
下の方にそっと付け加えた”心音”の文字に、書いてしまってからまた悩む。
無駄に下の名前表記にしたせいで、別れ話をたった一言のメモで終わらせた女みたいになってしまったような。
黙って苗字にしておけば良かった。
……って、いやいや。
だから、菅野さんはそんな深く考えずに捨てるんだってば、こんなメモ。
相当疲れてるんだな、私。
早いとこ帰ってゆっくりお風呂に浸かろう。
それから、真っ暗な部屋でベッドに大の字になって身体を休める。……あぁ、考えただけで急激に身体が休息を求め始めた。
「よしっ、」
帰りは奮発してタクシーで帰ろうと心に決め、部屋の電気を消して玄関へと向かう。
「玄関の電気も、消して……と」
靴を履き終えて、壁を指で辿りながらパチッと電気を消せば、次の瞬間には暗闇に包まれてしまった。