リペイントオレンジ🍊
ここに来て、菅野さんの連絡先を知ることになるとは思ってなかったけど。
……どうしてだろう、嬉しく思っている自分がいる。
「昨日のお礼……」
視線は、スマホと名刺を行ったり来たり。
今日は仕事かな?電話したら迷惑かな。
そう思いながらも、私の指は液晶画面に番号を打ち込んでいく。
耳に押し当てて呼吸を整える自分に、まるで恋をしているみたいだ……なんて。
恋??まさか。
そんなはず、ない。
そんなはずないのに……
『はい、みなみ市消防署、菅野です』
───ドキッ
聞こえた声に、心臓が大きく跳ねた。
「あ、あの……おはようございます。尾崎 心音です」
『……もう昼だ』
「うっ、あの……昨日は、本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした!!菅野さんが部屋まで運んで下さったんですよね……?」
『よく知りもしない男の前で簡単に意識を手放すな。それが無理なら二度と飲むな』
「お、おっしゃる通りで……」
あぁ、返す言葉もない。
私にミジンコ程度も興味が無い菅野さんだから良かったようなもので、もし昨日送ってくれたのが拓也だったら……?