リペイントオレンジ🍊


こんな時、榊先生がいてくれたら……。
そう思ってしまう未熟な自分が嫌になる。


「そうだ……、蒼介くん……」


さっき、見つけられなかった蒼介くんのことを思い出して青ざめる。

どうしよう、どこに行っちゃったんだろう。


少し弱くなったように感じる揺れに、生徒たちを避難させるなら今しかないと私の直感が騒ぐ。

だけど、移動中にまた大きな揺れが来たら?
それに……蒼介くんがまだ、


「尾崎先生!そっち大丈夫??」

「っ、榊先生!!大丈夫です!……ただ、」


2階の見学をしていた榊先生が、自分のクラスの生徒を連れて階段を降りてくる。


その姿に、安心して何だか泣いてしまいたい気分だ。


「ただ、どうした?」

「それが、蒼介くんが見当たらなくて」

「え?」

「……あの、申し訳ないんですが、私のクラスの子たちも一緒に避難させてもらえますか?私、蒼介くんを探しに行ってきます!」

「ダメだ!蒼介なら俺が探しに行く。尾崎先生は子どもたちと先に避難を」

「いいえ!"ちゃんと見てる"って、約束したんです。……私が探します。すぐ戻りますから!榊先生は、みんなをお願いします」
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