秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 そんなことない、と心の中では思いつつも、どうフォローしようかと考えていたら、

「北川さぁ、男の嫉妬は見苦しいよ。あんた、先生のこと、なんにも知らないのに」と美岬がさりげなく夏瑛の気持ちを代弁してくれた。

「なんだよ。平野も沢渡派かよ。じゃあ、原田さんは?」

「えっ、わ、わたしは」と思わず口籠もる。

「決まってるじゃん。夏瑛も沢渡先生だよ。北川よりも。あたりまえでしょ」
 美岬は北川に見えないようにウインクした。

「おれ、平野に訊いてるんじゃないんだけど」

 まだ追及されそうな雰囲気だ。どうしよう。

「お、いたいた。北川、お前、もう課題終わった?」
 さいわい同じクラスの男子がやってきて北川に話しかけたので、靭也の話は、そこで立ち消えになった。

 夏瑛はほっと胸をなでおろした。

「しかし、北川もかわいそうな奴だね」

  美岬が北川に聞こえないようにつぶやいた。
 
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