秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「家まで送るよ」
 美岬と別れて叔父の家に戻ると、靭也が声をかけてきた。

 夏瑛ももう、パーティーを楽しむ気分でもなかったので、靭也とともに叔父の家を後にした。

「平野さん、大丈夫だった?」

「うん。もう落ち着いてたよ。靭にいちゃん、美岬のこと悪く思わないでね。家のことでいろいろ悩みを抱えているみたいで……」

「いや、まったく気にしてないよ。それより、いい友達できて良かったな」

 いつものように並んで歩いているのに、触れ合うほど近くにいるのに、夏瑛は靭也を遠くに感じた。

 見えない壁に阻まれているようで。

 それは靭也も同じようだ。
 
 ふたりともなかなか言葉が出てこなかった。
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