秘密の恋はアトリエで(前編) 続・二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
「あのね……」「夏瑛……」

 声が揃った。
 夏瑛は、靭にいちゃんから先に言って、と促した。

「いや、あのさ、夏瑛は、疑ってたのか? おれのこと」

「ううん。浮気されたなんてぜんぜん思わなかったよ。でも……」

「でも?」

「でも、もしかしたら……他に好きな人ができたってことなのかな、とは思った」

 靭也は足を止めた。

 外灯が足元を照らしているけれど、表情までは見えない。

 光に誘われた蛾がふらふらと目の前を通りすぎていく。

「夏瑛は……おれのこと、そんな男だと思ってたのか? 他の女と寝て、その後で何食わぬ顔で夏瑛と会うような」

 靭也はあきれたようにそう吐き捨てた。

「だって、ものすごく綺麗で、それで……大人の雰囲気の人だって聞いたから、靭にいちゃん、わたしなんかじゃ、やっぱり物足りないのかなって……思って」
< 62 / 73 >

この作品をシェア

pagetop