戦争に塗れたこの世界はボードゲームで勝敗をつけてしまうようで。
“逃げろ”


私の野生の勘がそう言った。


今までやってきた通りに相手を殺す


はずだった。


私の体は少しも動かなかった。


肩に触れている彼の手に力が入る。



「…ッ」



思わず呻き声を上げる。


誰だ此奴は。


理事長殿の何なんだ?


私を襲う理由は理事長殿だろう。



「誰だ。」



私は顔はそのままに彼に問ふ。


だから彼がどんな顔をしているのかは分からない。


ただ、やばい奴だというのは分かる。


…まずい、目眩、が…。


パタン…。


私は床に倒れ込む。


せめて顔だけでも…そう思い横目で彼を見る。


細目に長い黒髪。


だらしなく着込んだ白い長袖の服。


…おい、ちょっと待て。


確か『政府反乱異能軍』は別名『陰』。


黒い羽の刺青が絶対にしてあると聞いた。


そして此奴は、首元に黒い羽の刺青…!!


ん?


いや、黒い羽と…風の刺青?


…個体を表すのか?


それとも…能力?


まぁ、どちらにしろ反乱異能軍であることに
変わりはないのだろう。


「何の用だ?『政府反乱異能軍』。」


その男はニィと笑うと、言った。


「初めましてだねぇ。僕は『陰』の1人、
 能因 夜雪(ノウインヤセツ)。」


まさか自ら名乗ってくれるとは。


まぁそれは置いておくか。


「それで?能因夜雪、何の用だ?」


「君達の理事長に会いたいんだけど、
 話を通してくれないかなぁ?」


「この状況でどうしろと?」


「ああ、そうだねぇ。」


のんびりと話す此奴の口調が気に喰わない。


ていうか敵にかけた能力を外すって
馬鹿なのか此奴は?


「なぁ〜んて能力外すと思っちゃったぁ?」


「いやこれっぽっちも」


「はは、わかってて言ったのか。
 君は機転が効くんだねぇ」


あーうざい。


何なんだ此奴のこのウザさといい、
纏う雰囲気は!!


悪役そのものだな!!


「…んで?私にどうしろと?」


「君は抵抗しなければそれで良いよ」


「私を人質にとる気か?」


「まぁね。それに丁度あの子も居ないし…」


「あの子?」


「君知らないの?俺達が言うあの子って言ったら
 1人しかいないじゃん」


「私は5日前にきたばかりなんだが?」


「ああ、どうりで俺が見たことない訳だ」


「それで、あの子って?」























「元・『陰』最年少幹部寂蓮優崋(ジャクレンユウク)」



























…元最年少幹部がこの『神代の郷』にいるのか。


ああ、そういえば一人思い当たる奴がいるな。


実際的な面識はないが。


確か二人目ぐらいにいた奴だ。


名前は蓮 優崋(レンユウク)。


まぁ寂しいという字をなくしただけだが。


確か理事長が言うには
“只今『政府異能専科団』に潜入中”
らしいが。


でも確か『政府異能専科団』にも能力者
かなりいたような…。


まぁ、私には関係の無いことだ。


能力は確か「村雨の」だったな。


それにこんな状況じゃ能力を使っても意味が…
いや、コレを使えばいけるな。


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