陰の王子様
何、この状況…。
真正面に第二王子が座ってるけど。
…このそうそうたる面々の中に私、って…。
こんなところにいて良いのだろうか。
「元気そうで良かった。いなくなった時は心配したぞ?」
左横に座るローガンさんが優しい口調で心配してくれてる。
「…すみません。本当…、私、もうここには来るつもりなかったのですが。」
「それは困るなー。シンアはもういないんだから、レティシアとしてここに通ってよー。」
クッキーを口に運びながらサンチェさんはそんな事を言ってくれる。
「そんな、通うだなんて。…私は、ひっそりと生きて、コヴィー家に恩返しするんです。」
「ひっそりは無理だな。だって、君、今や社交界の注目の的だよ?手紙とかたくさん来るでしょう?」
サンチェさんのその言葉に眉間に皺が寄るのが分かる。
「…皺が寄るほど来てるのか。」
王子に言われ、慌てて顔を戻す。
…もう、遅いけど。
「いや……、はい。手紙は嬉しいのですが、物が…。どうして良いのか分からず、そのままで…。」
贈り主の事を考えると、どうにもできない。
処分なんて事はしたくないから。