陰の王子様
ハーフアップにされた髪の毛を乱れていないか気にしている間にすぐ城に着いていた。
馬車を降りるとジェハさんがどこからか現れた。
「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ。」
にこやかな笑顔に少し緊張がほぐれる。
着いたのは、この前と同じ中庭だった。
「来てくれてありがとう。」
「こちらこそ、お招きありがとうございます。」
右手を取られ、王子にエスコートされている。
想像しない展開に失礼がないよう大人しく、冷静を装って足を進める。
日除けの下では、サンチェさんが寛いでいた。
ローガンさんはお仕事らしく、今日はいない。
サンチェさんを話の中心に、緊張していたお茶会は終わる頃には自然と笑っていた。