陰の王子様
「んもう。早く終わらせてよ?」
ある意味で有名な彼女とただの騎士が並んで歩いているのは興味深いのだろう。
ここにくるまで、真面目に警備している騎士や城の使用人らしき人たちには大丈夫かという目で見られた。
とりあえず彼女の分の酒をグラスに注ぎ終え、どう切り出すかと考えていると、
手を引かれ、彼女の隣に座らせられた。
そして、もう1つあったグラスに彼女が酒を注ぐ。
細長く綺麗に手入れされてる手でグラスを差し出される。
…ここは受け取るのが賢明だ。
素直に飲んだことに満足したのか、彼女が全体重を自分に預けるようになだれ込む。
そんな体勢でさらにさわさわと体を動く彼女の手に気を取られないよう集中する。