陰の王子様
「…お城の、お茶会なら、楽しいのに……。」
あの穏やかな時間が恋しい。
もう何週間お邪魔していないだろう。
…いや、今までお邪魔していたのが異常だったんだ。
これが普通。
頬に流れる涙をそのままに、楽しかったあの時間を思い出す。
「お嬢様、顔色が良くありませんよ。今日は、お休みになってください。」
「大丈夫です。昨夜ちょっと寝つけなくて。」
「ですが、最近はずっと顔色が悪いです。」
心配してくれている使用人さんに、ごめんなさいと謝って、今日もライラ様の屋敷に向かう。
正直、体は全然良くない。
ライラ様の屋敷に通うようになって、うっすらと眠れていた私の睡眠は完全になくなった。
今までは予知夢を見ないために薄く意識を持ったままの状態を維持していたけれど、今は目を瞑るだけでライラ様の顔や笑われる声が頭の中に響き渡ってしまう。