陰の王子様
「見事に真っ黒だな…この長い前髪も…」
スッと流せば長いまつ毛が影を落としていた。
着ていた上着をシンアにかけ、しばらく側にいると部屋がノックされた。
「…無事、ということですかね。」
「まあ…完全にとは言えないみたいだが。」
側で眠るシンアの唇にはオレリアがつけていた真っ赤な跡が。
唇を傷つけないよう、指でそっと拭う。
「じゃあ、この女のことは任せた。」
「はい。」
男はシンアをそっと横抱きに抱え、部屋から出て行った。