陰の王子様
「おはようございます。お嬢様」
「おはよう、スズ」
スズが起こしに来る前にベッドから下りて、窓際の椅子に腰かけていた私を見て、スズは苦笑いする。
「慣れませんよね。」
「うん。ごめんね。なんか色々考えちゃって…。」
「お嬢様のペースで良いんですよ。他の御令嬢たちに合わせなくて良いんです。温かいお茶いれますね。」
着替えもしないまま、寝起きの薄い格好で窓から差し込む陽の光を、全身に浴びる。
後宮に入って5日が経った。
私やライラ様の他にも3人の貴族令嬢が後宮に入っている。
けど、後宮に入ったからといって、イオ様から何か行動があった訳ではない。
イオ様は後宮に来ません。とスズが教えてくれる度、ホッとすると同時に悲しくもなる。
イオ様と御令嬢が一緒にいるところを見かけたら、きっと苦しくなる。
それが分かっているから、後宮に来ないでと願っているのも事実。
…でも、来てくれないということは、私にも望みはないということ。