陰の王子様




「お嬢様、たくさん勉強しなよ。と、サンチェ様から伝言を承りました。」



その言葉に笑みが溢れる。


…そういえば、あの時もサンチェさんは言ってた。




『…クロード様は君の能力のためと言っていたけど、僕は将来の君に役立つと思うから。きっとね。』





サンチェさんに2度もそう言われてしまえば、やる気にならない訳がない。


「スズ、私ここにいる間、勉強漬けにする。」



そうすれば、嫌な自分と向き合う時間が減ると思うから。


「倒れないでくださいね。」



にっこりと笑ったスズに私も笑い返す。


よしっ!と自分に気合いを入れて、まずは着替えようと、大きすぎるクローゼットに向かう。





「お嬢様…、お嬢様だけなんですよ。お嬢様だけお勉強の内容が王妃になられる方用のものなんです。」


「ここにいる間、表立って王子が訪ねてくることは、もしかしたらないかもしれません。…1人を訪ねると、他の方たちのところにも訪れないといけませんから。」



「どうか、心穏やかに。…そう王子は強く願っていましたよ。」






スズの言葉はクローゼットの前でドレスを選んでいるレティシアには届くはずもない。




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