陰の王子様
「えっ…、」
「何をおっしゃっているのですか!?私の話を聞いておられましたよね!?この女は後宮にいながら、男と密会を!」
「俺は侍女の格好で会いに来たが?」
「………何を、おっしゃって…?」
「スズミ、レティシアは騎士と密会などしていたか?」
「いいえ。一度、侍女の格好をした王子とは密会をされましたが、それ以外の男性とはお会いになっておりません。」
スズのはっきりとした声に、ライラ様の怒りが爆発する。
「イオ様と密会ですって!?なんと汚らわしい!お父様!お父様からもイオ様に言ってください!そんな女は相応しくないって!」
「…キース公爵、あの話はなかったことに。」
「うちの娘が失礼なことを。大変申し訳ございません。」
深々と頭を下げるキース公爵
その表情は、いつもの飄々としたものではなく、イオ様の気持ちを理解しているような表情だった。