陰の王子様
それを見たイオ様は、隣の彼女を見る。
「申し訳、ございません。…短い黒髪の女性の密会など、見たことありません。」
深く、深く頭を下げる彼女
「頭を上げて良い。」
イオ様の言葉も聞かず、頭を下げたまま。
「…侍女として、やり直したいのなら。スズミの下につけ。そしたら、レティシアの侍女になれる。」
「そんな、…私なんかが。」
バッと頭を上げた彼女は、また首を振りながら俯く。
「俺の妃になる女だ。信頼のおける侍女を側に置いてやりたい。…できるか?」
「っはい!」
もう話についていけないのに、涙が止まらない。
イオ様は何を言っているんだ。
私が、イオ様の妃?そんなのなれる訳ない。
そんな、夢のようなこと、起こる訳ない。
「レティシア、俺は貴方のその綺麗な心にきっと惹かれたんだ。」
涙でよく見えないイオ様が笑った気がした。
そして、私と彼女が握り合う手を見て、優しく笑って私を見た。
「好きだ。レティシア」