陰の王子様
重い瞼をゆっくりゆっくり持ち上げる。
何だか、長い夢を見ていた気がする。
「お嬢様!おはようございます!」
「…おはよう。スズ、どうしたの?…ここ、コヴィー家だよね?」
「はい!侯爵様に頼んでお嬢様のお世話を任せていただきました!」
皆様に報告してきます!と飛び出す勢いで出て行ったスズ
何だか、また瞼が重くなり、今スズがきっと呼びに行ったのに…、と思いながらも、再び目を閉じた。
『お母様!!きゃはは!』
『ずるい!僕も!』
ゆっくり目を開けるも、意識は夢の中
夢の中の私に小さな子どもが飛びついてきた。
"お母様"と、呼んで。
幸せな気持ちになって、しばらくそのままでいると、
「起きた?」
横から急にサンチェさんが視界に入る。
「うわっ!」
「あー、ごめんごめん。」
あははと笑うサンチェさん
…せっかく幸せだったのに、と思いながら、さっきの夢は大切に記憶する。