陰の王子様
今までの涙とは違って、とめどなく涙がこぼれ落ちていく。
声にならない思いをイオ様の服を握りしめた手にこめる。
「っなん、で……、何で…?」
涙を流しながら、それしか呟かない私
イオ様は困った様に笑って真正面から向き合う。
「生き残った人たちは数年間、里の側の森の中でひっそりと暮らしてた。俺がそれを見つけたのは里がなくなった2年後」
「そしてそれから1年、約7年前にウィザリアで生活してくれるようになった。」
「…みんな、ここに来るの、嫌がってたんですか。」
「それはそうだ。彼らは里、トレス家を忘れないために森にいると言っていた。」
涙でボロボロの顔をイオ様が袖口で拭ってくれている。
「愛されてるんだな、って強く感じた。」
イオ様が優しく笑うものだから、私も自然と口角が上がった。
昔の光景が思い出される。
子どもだけで遊んでると近くの大人たちに叱られたり見守られてたり。
そんな里が、もう一度…。
「…みんなが、納得してくれたら。……その時は、再建を、…よろしくお願いします。」