陰の王子様
「レティシア、長い間辛い思いさせてごめんな。」
「どうしたんですか?それはもう良いんです。」
それでもぎゅーっと抱きしめる力は増すばかり。
もしかして、レイナ様と国王様の話し合いにイオ様も参加しているのだろうか…。
「…確かに、辛かったです。でも、私、ウィザリアに来れて良かったと思っています。騎士団で剣術も少しだけですが、身につきましたし、友もできました。」
「もともと、里を走り回っていた私にとって、とても貴重な経験です。」
イオ様の胸元に頬を擦り寄せ、大きな背中に回した手を私も強く抱きしめる。
「…長い間、イオ様が私を気にかけてくれていた。守ってくれていた。その事実だけで、この10年間はイオ様に出会う、…再会するための10年だったと。そう思えます。」
「イオ様、…大好きです。感謝しても仕切れません。だから、これからは私もイオ様を支えさせてください。」
大好きな人の大きな愛に包まれすぎて、自分でも何言っているのか分からなくなってきた。
それでも、感謝の気持ちとイオ様を好きな気持ちが届いていれば、と、目の前のイオ様に力いっぱい抱きつく。