陰の王子様
みんなが泣き、この10年を感じ合う。
「元気で、っ良かった…。……生きててくれて、ありがとう…。」
私の言葉にみんなは嬉しそうに笑う。
「レティシアお嬢ちゃん、良い男に好かれてるねえ。あの王子様だったら、トレスご夫妻も大歓迎だよ。」
「羨ましいねぇ!あんなに良い男に一途に思われて!」
「でも、うちのレティシアお嬢ちゃんと結婚するなら、あれぐらい良い男じゃないと私たちも賛成できないよー。」
みんなが口々にイオ様を褒め称えている。
恥ずかしくなりながらも、みんなの話に私も強く頷いている。
ここにいるのは女性と子どもが5人ほどで、その現実にまた悲しくなるけど、里の人たちにまた会えるなんて思っていなかった。
生きて会えた、それだけで十分なんだ。
「これ言っていいかね…、レティシアお嬢ちゃんちょっと。」
「うんうん、王子様には聞こえんよ。」