陰の王子様
確かに、ジェハさんにも色々教えてもらった。
「イオ様、改めて。…私のこと、里のこと、10年間も気にかけてくださって、ありがとうございました。」
深々と頭を下げる。
こんなものでは到底足りないのだけど。
「レティシア」
イオ様が跪いて、頭を下げている私の顔を見上げている。
顔を少し上げるが、なんとも微妙な体勢で、咄嗟に私も膝をついて向き合う。
ふっとイオ様が笑って、私の頬を両手で包み込んだ。
「重く感じなかったか?こんな10年も…、レティシアにとってみれば、覚えていない相手に思われて、陰でこそこそされて。」
すぐさま首を横に振り、自然と眉間に皺を寄せていた。
「そんなこと思いませんっ。嬉しくて嬉しくて、幸せすぎて、この先、不幸になるんじゃないかと不安なぐらいです。」
「俺がレティシアを不幸にはさせない。だから、そんな心配はしなくていい。この先ももっと幸せにする。」