陰の王子様
左を向けば、サンチェさんは真っ直ぐ王子を見ていた。
サンチェさん…?
どっちの立場なんですか?
そんなことは聞けるはずもなく、
再び俯き、拳をぐっと握りしめる。
王子に正体がバレてる。
そうなった以上早めに決着をつけなければ。
周りに自分の里を潰した奴らが、酒を飲み騒ぐ姿に殺意が湧き、その度に重ねられた左手にグッと力が込められる。
『パパー!』
『お、おかえり!今日は何をしたんだい?』
『ちょっと!泥だらけじゃない!今すぐお風呂入って!』
懐かしい記憶
平穏な毎日
すると、突然ザザザと切り替わる。
『–––––––、おいで。』
『はあ!ぁあ!……良い!いく…、いくぞ!この世で最も尊い子種を、君の中に!さあ、悦べ!!!』