1日限定両想い
『菊池先生…』
弾かれたように立ち上がった新田先生の声で、そこにいるのが菊池先生なのだと知る。
『新田。お前何してんねん。』
『いや、あの、俺はその…』
菊池先生が中に入って、後ろ手でドアを閉める。
どうして菊池先生がここに?
私と新田先生は今どんな風に見える?
この状況に頭が追いつかない。
『何してるって聞いてんねん!』
「菊池先生。」
『どうしてここにいるんですか。』
ようやく出た声は小さくて、簡単に新田先生の声に掻き消されてしまう。
誤解されたままの状況が、何重にも重なっていく。
『変な音が聞こえたんや。』
『それは…』
『これ須崎の弁当やろ?なぁ新田、お前須崎に何した!』
頭の上で飛び交う言葉をだんだんうまく捕まえられなくなってくる。
私の話なのに私の話じゃないみたいな。
ただ、もうやめてほしかった。
「菊池先生。」
今度は確実に気付いてもらえるように菊池先生のジャージの裾を引っ張る。
立ち上がる気力はなかった。