1日限定両想い
『こんな早くにどうしてん。』
俺が不思議に思っても聞けなかったことを、菊池先生は簡単に聞く。
『少し早く目が覚めたので。』
『寝てへんのとちゃうか。』
菊池先生の言葉に須崎が小さく首を振る。
そのとき不意に薬の存在を思い出した。
だけど今返すのは須崎も嫌だろう。
『まだ時間あるねんから保健室で寝てきたらどうや。』
『大丈夫です。失礼しました。』
今度こそ職員室を出ていった須崎の背中を菊池先生が心配そうに見ている。
俺は拾った薬が入ったままの通勤鞄を掴むと、慌ててその後を追った。
そんな俺の背中を、菊池先生はどんな表情で見ていただろうか。
「須崎。」
教室へと向かう廊下で須崎に追いついた。
改めて向き合うと、菊池先生が寝不足を心配したように顔色が良くない。
「これ、昨日相談室に落ちてたんだけどな。」
『あ…』
「須崎のか?」
俺の手のひらにある小さな袋を須崎が見つめている。
その表情のなさが俺の不安を煽った。