1日限定両想い
「辞めないでくださいよ。」
『須崎の人生を壊したくない。』
「菊池先生…」
辞めれば須崎の人生を壊さずに済むのだろうか。
辞めなければ須崎の人生を壊すのだろうか。
実際に2人を目撃している生徒がいるのだから、菊池先生がこのまま残り続けることにリスクがあるのは分かる。
でも、でも…
「俺はもっと菊池先生と仕事がしたかったです。」
『嘘つけ。』
「嘘じゃないですよ。」
須崎を介してでしか菊池先生と向き合ってこなかった自分を唐突に後悔した。
菊池先生はいなくなってしまう。
「これからどうするんですか?」
『とりあえず大阪帰るわ。教師続けるかどうかはそれから決める。』
「須崎には…?」
『何も言わん。もう終わったことや。』
終わったこと。
須崎の中でも、俺の中でも何も終わっていないのに。
『須崎を頼む。』
最後にそう言い置いてダンボール箱の蓋を閉じると、菊池先生は職員室を出て行った。
それが、菊池先生との最後の会話だった。