1日限定両想い

私はその後、希望進路を地元の短大に変えた。

地元企業への就職に強いその短大に通うことで、大阪へ行きたいという気持ちを封じ込めたかった。


時はめぐり、受験勉強が本格化してくると菊池先生のことを考える時間は少しずつ減っていった。

もう考えない。

私は地元で進学して、地元で就職するんだ。



『頑張ってるな。』


放課後に図書室で勉強していると、新田先生が声をかけてくれた。

グラウンドから響いてくる運動部の声だけが聞こえる静かな図書室。

向かいに座った新田先生は、しばらく私が広げるノートをただ見つめていた。


あの日以来、菊池先生と連絡が取れたと新田先生から聞くことはなかった。

同僚の誰1人、菊池先生の新しい電話番号を知らなかったそうだ。


それでも新田先生は知り合いの教師を辿って何とか菊池先生と連絡を取ろうとしてくれている。

そんな新田先生を見ていると、私のことなんかより新田先生の為にもどうか繋がってほしいと思うようになった。



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