1日限定両想い
『自分だけが須崎さんのことを理解してるつもりで、寄り添えてると勘違いしてた。』
「勘違いなんかじゃないと思います。竹石先生の想いは須崎もよく、」
『何も知らなかった。』
よく分かっていた、そう言おうとした声が遮られる。
その先を聞きたくない。
本当のことなど知りたくない。
俺だって心詠のことを理解しているつもりで、寄り添えていると思っている。
でも菊池先生と心詠のことは、本当は何も知らない。
『菊池先生を必要としてたのは須崎さんの方だった。』
返す言葉もなく、ただその続きを待つ。
どうしてそれを俺に話すのか。
俺に伝えようとしていることは何か。
『手紙のやりとりをしてるうちにわだかまりが溶けて、本当のことを話してくれるようになったの。あとは、この手紙を読んでもらえれば分かるから。』
再び差し出された手紙を目の前にしても、やはり手は伸びなかった。
「俺が読んでもいいんでしょうか。」
『それも、読めば分かるから。』
そっと俺の手の上に乗せられた手紙を、震える手で受け取った。