1日限定両想い
『余計なことをして本当にごめんなさい。菊池先生が学校を辞めて須崎さんも卒業した今なら、2人を会わせてあげることができる。』
「それは…そうですけど…」
『お願い。』
竹石先生は俺と心詠が今付き合っていることを知らない。
後悔の気持ちが消えないのは分かる。
でも俺は、俺は…
心詠を失いたくない。
《大阪の桜はもうすっかり散ってしまいました。》
帰宅して開いた手紙は、そんな一文から始まっていた。
菊池先生とはあまりにも結び付かない綺麗な書き出しに思わず笑ってしまう。
《何度も書いてきましたが、自分が教師を辞めたことは竹石先生のせいではありません。責任など感じないでください。
今の仕事はとても自分に合っていて、やりがいを感じています。地元に帰ってきて良かったと心から思っています。
ただ、》
繊細で正確な達筆を見た目にそぐわないと言って睨まれた日を思い出す。
教師の菊池先生はもういない。
ただ、その先を読む前に1度目を逸らす。