1日限定両想い

《ただ、ひとつだけ思い残していることがあります。須崎のことです。》


俺と心詠の新しい日々が始まっても、菊池先生の中では何も終わっていなかった。



《自分が須崎に生徒以上の感情を持っていたことは以前にもお話した通りですが、正直に打ち明ければ、あの頃自分を必要としていたのは須崎の方でした。》


鼓動が、少しずつ速くなっていく。



《自惚れだと思われるかもしれませんが、自分が須崎に想いを寄せるようになったのは、先に想いを寄せられたからだと思います。》

《とても過酷で、孤独で、そんな境遇にいるからこそ近くにいた自分に頼ってしまった。何度も自分にそう言い聞かせ、これ以上は惹かれてはいけないと思い続けていました。》

手紙の端にしわが寄っていることに気付き、慌てて力を緩める。

自惚れだなんて思わない。

心詠は紛れもなく菊池先生のことが好きだった。



《でも惹かれてしまいました。気持ちを抑えることができず、結果的に須崎を一人にしてしまったことを今でも後悔しています。》


菊池先生に置いていかれた心詠。

その心の隙に、俺は入り込んだ。



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