1日限定両想い

『あーたこ焼き食べたい!』


ホテルに荷物を置いて身軽になった心詠が大きく伸びをする。

そういえば俺もまだ大阪名物を何も食べてないなと思い、とりあえずたこ焼き屋を目指すことにした。



『昨日はどこ行ったの?』

「うん?」


手を繋いだ拍子に本当に何気なく聞かれて、もしかしたら心詠は何も察していないのだろうかと思う。

まだ始まったばかりの1日に、どう答えるのが正解か考える。


昨日は、菊池先生に会いに行った。



「まぁちょっと。心詠には言えない人だな。」

『え~怪しいなぁ。』

「まぁそのうち分かるよ。」


お互いが気付かないふりをしているのだとしても、今はそのままでいたい。

それ以上探ろうとしてこない心詠に救われて、天気のいい真夏の空を見上げた。


菊池先生は、今頃どうしているだろう。

部屋は綺麗になっただろうか。


昨夜久しぶりに会った菊池先生は、驚く程菊池先生のままだった。

その変わらなさが、俺の心を揺さぶった。



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