1日限定両想い
『ごめんなさい…』
「何も言うな。」
『私がちゃんと…』
「須崎!」
身体の震えを抑えるように頭を抱えこむと、俺の腕の中で少しずつその強張りを緩めていった。
冷静さなんて、とっくに失っていた。
俺が今しなければならないことは、ただ須崎を落ち着かせて、その気持ちを守ることだ。
「大丈夫。お前は何も悪くないから、もう謝んな。」
その言葉に須崎が俺の腕を強く掴んで、そのまま身体を預けてきた。
辺りを気にせず走り回っている間に、大通りからは外れた裏道に入り込んでいた。
座り込んだ道路に差し込む街灯の灯りは細く、何も照らさない。
『…帰らないと。』
はっと思い出したように須崎が腕からすり抜けて、よろよろと立ち上がった。
「電話貸して。」
『え…?』
「送るから。母親に連絡する。」
須崎は少し躊躇う素振りを見せたけれど素直に電話をかけて、そのまま俺に渡した。
俺は高校の教師だということ、祖母を探していた須崎に偶然会ったこと、これから車で送って行くことを母親に話した。