1日限定両想い
車を停めていた駐車場まで歩いて戻る途中も、車に乗ってからも、須崎は家までの道順以外は何も話さなかった。
聞きたいことはありすぎるくらいにある。
でも今は気持ちを落ち着けることの方が大切で、本人から話さない限りは聞かずにいようと決める。
『先生すみません。ご迷惑をおかけしまして。』
「いえ、たまたま通りかかっただけですので。」
須崎の家に着くと、母親が慌てて玄関まで出てきた。
須崎とよく似た小柄で綺麗な顔立ちの、とても若い母親だった。
『心詠ごめんね。心配かけちゃったね。』
『ううん。私の方こそごめんなさい。もうこんなことないようにするから。』
労りながらも笑顔で話す母親に、須崎もはっきりとした口調で返す。
先程までの取り乱していた姿は影もなく、その落差は無理をしていることが明らかだった。
玄関には手すりが付けられていて、それは玄関を上がった廊下にも続いている。
介護、という言葉が頭に浮かんだ。