1日限定両想い

車を停めていた駐車場まで歩いて戻る途中も、車に乗ってからも、須崎は家までの道順以外は何も話さなかった。

聞きたいことはありすぎるくらいにある。

でも今は気持ちを落ち着けることの方が大切で、本人から話さない限りは聞かずにいようと決める。



『先生すみません。ご迷惑をおかけしまして。』

「いえ、たまたま通りかかっただけですので。」


須崎の家に着くと、母親が慌てて玄関まで出てきた。

須崎とよく似た小柄で綺麗な顔立ちの、とても若い母親だった。



『心詠ごめんね。心配かけちゃったね。』

『ううん。私の方こそごめんなさい。もうこんなことないようにするから。』


労りながらも笑顔で話す母親に、須崎もはっきりとした口調で返す。

先程までの取り乱していた姿は影もなく、その落差は無理をしていることが明らかだった。


玄関には手すりが付けられていて、それは玄関を上がった廊下にも続いている。

介護、という言葉が頭に浮かんだ。



< 50 / 250 >

この作品をシェア

pagetop