1日限定両想い
『おばあちゃんは?』
『大丈夫。ご飯食べて今は寝てるから。ご飯ありがとうね。』
「あの、」
帰るタイミングを探して声をかけると、振り返った須崎の瞳が思いがけず強い色を湛えていた。
言わないで、そう言っているような。
混乱して取り乱していた自分を絶対に母親に知られたくないと、その瞳が訴えかけていた。
「そろそろ失礼します。」
『ありがとうございました。』
須崎が丁寧に頭を下げる横で、母親が視線を外へと動かした。
外で話したいのだと思いしばらく待っていると、母親がそっと玄関から出てきた。
『先生。今日は本当にありがとうございました。』
「いえ、自分は何も…。」
『あの…心詠は学校では大丈夫でしょうか。』
そうか、須崎の名前は心詠と言ったのか。
あの子らしい、綺麗な名前だ。
母親の真剣な問いかけに、なぜかそんなことを考えていた。
何と答えることが正しいのだろう。
須崎が望む答えは、望まない答えはなんだ。