秘密の片想い
時代錯誤な考え方に憤慨していると、ケンケンが間に入って取り成すように言う。
「はいはい。レオは本当、上野さんを溺愛してるよな」
「そうそう。志穂のこと、自分は『シー』って呼ぶくせに、ケンケンには呼ばさせないし、さ」
静観していた瑠夏まで同調して、私は目を丸くする。
「え? そうなの?」
「俺、そんなこと一言も言ってないって」
苦笑する三嶋に、二人は取り合わない。
「呼ぼうものなら、すごい形相で睨むくせに」
ケンケンが「こんな顔で」と目尻をグッと上に押し上げてみんなを笑わせる。
「そりゃ、シーは可愛いから」
「はいはい」
軽く言われ、私は呆れ声で返す。
「ほら見ろ。ケンケンが変なことばっかり吹き込むから、俺の褒め言葉、全然シーに響かないんだぜ」
「自業自得」
三嶋は私を溺愛しているお父さんキャラで、ケンケンはみんなを笑わせて、瑠夏はここぞという時に鋭い指摘をして、私は毎日が楽しかった。
三嶋に対して、少しだけ恋にも似た気持ちが無かったわけじゃないけれど、この関係が崩れてしまうのは嫌だった。
もちろん、私に対する三嶋の態度はモテる彼の冗談だって心得ていたし。