秘密の片想い
「シーに「三嶋が代理店営業するとは、思わなかった」って言われた時は、見透かされているかと思ったよ」
乾いた笑いをたてる三嶋を、狐につままれたような気持ちで見つめる。
「冷や汗ものだったけど、同時に嬉しくもあった。俺のこと、わかってくれてるんだって」
「それは……」
2人で話したことがある。
お客様の人生に、寄り添って考えたい、と。
自分と同じような考え方をしていた三嶋に嬉しくなったから、よく覚えている。
だからこそ、お客様と直接関わる営業から、離れるわけないと思ったのだ。
三嶋は、もう一つの思いを吐露する。
「武内所長には頭が上がらないよ」
私自身も、武内所長に頼み込んだ口だ。
タケウチ保険事務所は、私が研修でお世話になった代理店。
営業に行かせてくれず、窓口業務をしたと愚痴っていた時の所長こそが武内所長だ。
莉乃を産むと決めた時から、働かなきゃいけないけれど、三嶋と同じ場所にはいられなかった。
その時の、逃げる場所として武内所長にお願いしたのだ。
本社からは、決して近くない。
だからと言って、同じ職種では彼に見つかってしまうかもしれない。
そう思わなかったわけではなかったけれど、私も保険という仕事から離れたくなかった。