イルカ、恋うた
「破棄してなかったら、祝えるんだ?他の人と結婚するのに……」


――違うよ。


あんなに辛い祝いの言葉、人生で初めてだった。


だけど、君が幸せになれる、と思ったのは、事実で、それを祝福したかった。


ただ、幸せにできるのが、自分じゃないってことだけで……


君が幸せなら、俺はそれでよかったんだ。


何を言ったらいいか分からず、「ラッコ見たいんだろ?行こう」
と、先に進ませた。


「……ごめんなさい……私が一方的に好きなだけなのに……こんなこと言って……」


あれだけ、桜井検事のことを考え、罪悪感だとか、人を不幸にしただとか、善人ぶってたくせに……


――好きだよ。


――両想いを喜んだのは、本当は俺自身だった。


わずかに残る、桜井検事への良心から、その思いを口に出さないようにした。



途中、簡単なお土産売り場を見つけた。


美月は興味を示し、俺から離れると、すぐさま寄っていった。


キーホルダーやぬいぐるみがあるのに、一直線にある場所に向かう。


嬉しそうに、そこであるものを見つめてた。


俺はゆっくり近づく。


雑誌掲載?


雑誌のコピーがあり、それを手に取った。


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