イルカ、恋うた
空いていたベンチに座り、揺れるブランコを見てた。


手を焼いていた、すぐにも一層したかった組織。


覚醒剤取締法違反で逮捕したかったのに、一向に証拠が出ず、捕まえた売人は、組織を知らない、と言う。


まぁ、身元を互いに隠したまま取引するという、用事深さだったらしいし。


余程、信頼があったんだな。


売人が身元を明かさない相手と契約するなんて。


いや、自分の為にもなるか。相手が捕まったとして…


「って、もう、やめよう。第一、警官殺しは関係ないって」


こいでいた子どもが飛び降りると、ブランコはしばらく、揺れてた。


「そうだ。関係ない」


全く関係ない事件がきっかけで、首領が覚醒剤取締違反でムショに送った。


確かに、ありえないことではないし、ドラマや映画でも駆け引きの一部みたいに、そういったシーンは使われる。


「別件で引っ張って、自白に持ち込むとか。証拠を集めるとか。簡単なことじゃ……」


嫌な言葉が浮かぶ。


―不可能なら、作り上げればいい。


警察か、もしくは検事……?


弁護士に会ってみたいと思った。


「あ、木田。悪い、弁護士の連絡先教えて」


携帯を耳と肩ではさみ、ペンを握った。


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