みだらなキミと、密室で。

『ちょっとごめんね』と言いながら電話をとった店長は、電話の向こうにいる人に相槌を打ちながら、だんだん顔が曇りだす。

「……えっ、今から?」

そう言ってチラッと私のことをみる店長。

あれ。
もしかして急用できちゃったかな。

別に私は全然1人でも帰れるんだけど。

「……あぁ、わかった、わかったから落ち着いて。すぐ行くから」

そう言って電話を切った店長がすぐに私のことをみる。

「海風ちゃんほんとごめんっ!!家内からで……娘が高熱出してて今から病院に連れてかないといけなくなっちゃって、」

「え、そうなんですか!私のことは本当に大丈夫ですから!行ってきてあげてくださいっ」

「海風ちゃん、今日、何から何までほんとごめんねっ」

今日は店長に何度も謝られてて逆に申し訳なくなるよ。

「いえいえ、ごちそうしていただきましたし、ほら、うちほんと近いんで!走ったら5分で着きますよ!だから大丈夫です!それより早く娘さんのところに!」

「申し訳ない。ありがとう!一応心配だからおうち着いたらメッセージでもなんでもちょうだい!助かる!ありがとう!」

店長は早口でそう言ったあと、私にお店の鍵を預けて、すぐに飛び出していった。
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