みだらなキミと、密室で。

風邪、流行ってるのかな。

バイト先を出て、トボトボ歩きながらふと考える。

今日一緒にホールだったはずのマリナちゃんも、店長の娘さんも熱って。

私はむかしっから身体が丈夫で、なかなか熱がでたりしたことがないからなぁ。

風邪ひいてもすぐに良くなっちゃうし。

いいことっちゃいいことなんだけど。

看病されることにちょっとした憧れもある。

看病といえば、まだパパも家にいた頃、ママが風邪を引いてしまって、パパとふたりでママの看病をしたことがあったっけ。

冷水に浸したタオルを絞ってママのおでこにのせてあげて。

そのすぐ横でパパがママのために果物を切ったりして。

ママのために一緒におかゆを作ったり。

おかゆに入れる溶き卵を割るときに私が殻を入れちゃって、パパが必死にその殻を取り除いてた。

懐かしいな……。

懐かしいと同時に、あんなにママのことを大切に思ってたはずのパパがどうして?

なんて気持ちも過ぎる。

新しい家庭を築いて、新しい奥さんにも同じことをするんだろうか、とか。

胸がギュッと締め付けられる感覚に襲われる。
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