俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
確かに手荒な真似をされたとは思う。

それでも、ひどい扱いを受けたわけではない。

態度と言動は厳しかったけれど、確かに危害は加えられなかった。


なによりも……私に鍵を返却してくれる手つきは優しかったし、謝ってくれた。

本当に悪い人なら、そんな態度はとらないはず。


だから、余計に気になった。

さっきの呻き声はなんだったのか、具合が悪いのを隠していないか。

ただ、人として心配しただけだ。


……お人よしで悪かったわね。

コツン、と足元に転がる小さな石を蹴飛ばす。

そんな子どもじみた真似をしても気持ちは少しも晴れない。


のろのろと管理人室裏側のもうひとつのベンチに移動する。

人感センサーのせいか、管理人室の周囲はとても明るく、怖さは感じない。

ここは先刻の彼がいた場所から管理人室のある建物を挟んで、真逆の位置になる。


そこには先客はおらず、ほっと息を吐いた。
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