俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
彼の返答はあながち嘘ではない。

それでも辺見さんに言われたセリフが心に引っかかる。


往生際が悪いとわかるのに尋ねずにはいられない。

もうやめなさい、と頭の中でもうひとりの私が警鐘を鳴らしているけれど、従えない。


「沙和に似合いそうだったからだよ」

迷いなく答える態度に私の中でなにかがはじけた。


どうして正直に言ってくれないの? このドレスを私に贈って後悔しているの? だったらなぜこの色を選んだの?


「……そ、う」

必死に平静を装って踵を返す。

「沙和?」


振り返らない、あの人の姿はもう見たくない。

もう十分、これ以上は無理だ。


こんな嘘をつき合うために一緒にいるんじゃない。

彼はこの先もきっと本心を晒す気なんてない。

イラだっているのか悲しいのか、自分の気持ちがわからない。


婚約してもなお、昔の婚約者を忘れられない辺見さんと、思い出にとらわれている愁さん。

未練はないと言っていたのに、私にこのドレスを着せて彼女に会わせた。


それはお互いの気持ちを、未練を断ち切るために協力してほしかったから? そこに私への気持ちは考えられていたのだろうか? 私を本気で婚約者にと望んでくれていたのだろうか?


……それならばそうと言ってほしかった。


彼の言う私への『本気』と『婚約』をきちんと受け止めなかったから? だから教えてもらえなかったのだろうか?


だったらなぜ課長に嫉妬したりするの? 見せつけたい、なんて言うの? 自分は気持ちのままに行動するのに、私のすべてを知ろうとするのに、どうして私にはなにも教えてくれないの?
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