俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
音をたてないように細心の注意をはらって、すべての荷物を抱え洗面所に向かう。


クシャクシャになっている肩につくくらいの黒髪、崩れた化粧……無様な姿が鏡に映っている。

でも今は外見に構う余裕がない。


あの男性が目を覚ます前に、一刻も早くここから立ち去らなくては……羞恥であまりにも恥ずかしすぎて、合わせる顔がない。

パンストを脱ぎ、バッグに押し込む。

髪を撫でつけ、バッグとパンプスを手に再びそうっと室内に戻る。


部屋を出る前にもう一度サッと男性の様子を確かめる。


よかった、まだ眠ってる。

……それにしても本当に、綺麗な人。


ドクン、と鼓動がひとつ大きな音をたて、一瞬で視線を奪われる。


でも……この人に助けてもらっていたとしたら? 

お礼すらせずに逃げるのは失礼ではないだろうか。


今頃になってそんな常識的な考えが頭に浮かぶ。


逡巡しながらも、近くにあったメモに伝言を残す。

震える指では文字ひとつ書くのにも時間がかかってしまい、余計に焦ってしまう。

財布を取り出し、宿泊代金を想像して紙幣を置く。
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