俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
ふたりが扉の向こう側に出て行った後、今も僅かに震えている手でワンピースを身に着けた。

繊細で軽やかな生地はとても着心地がよく、サイズも驚くほどぴったりだった。


一緒に渡されたゴールドの華奢なサンダルを履く。

高いヒールなのに、驚くほど足が楽だ。

ふわりと広がるワンピースの裾が心を高揚させる。


ちなみにあの千奈さんのパーティーで着用したドレスは今も大事に保管してある。

あの時、ふたりの仲が拗れてまとめた荷物は返却せずに、今も彼の厚意に甘えて使わせてもらっている。


自分のものとは思えない、大きな鼓動が響き渡る。

胸の真ん中で両手を重ね、一度だけゆっくりと深呼吸をして部屋を出た。


部屋の外はがらんとしていて、足を進めたメインホールには人気がまったく感じられず、パーティーが行われるとは思えない静けさだった。

カツンと床に高いヒールの音が響く。


「沙和」


背後から名前を呼ばれて振り返ると、身体にぴったりフィットした明るい紺色のスーツを身に着けた愁さんが立っていた。

相変わらずの美麗な容貌に見惚れてしまう。


「愁、さん……」

「よく似合ってる。……着てくれてありがとう」


低い心地よい声が耳朶を震わせる。

ゆっくりとした足取りで近づいてくる姿に思わず息を呑む。
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