俺の妻は本当に可愛い~恋のリハビリから俺様社長に結婚を迫られています~
嘘でしょ? どうして、この人がここにいるの?


柔らかな物腰でサッと手を差し出され、握手を求められていると理解する。

震える手を恐る恐る差し出すと、力強く握り返された。

大きく温かな手なのに指は細く、長い。

微動だにせずにいる私に、屈んで端正な顔を近づけた板谷社長が先ほどの挨拶とは違う、掠れた低い声でそっと囁いた。


「どうして黙ってホテルから消えた? ……逃げられると思ったか?」


そのセリフに身体に震えが走る。

ビクッと肩を上げて眼前の秀麗な容貌を凝視する。


……やっぱり、あの日の男性……! まさか社長だったなんて。


ドキンドキンドキン。

心臓が壊れそうなくらいに大きな音が響く。

衝撃で咄嗟に声が出なくなる。


「……浦部さんにお会いできて光栄です」

名前を呼ばれてハッとする。


先ほどの恐れさえ感じる声とはまったく違う、柔らかい声が響く。

慌てて周囲を見ると、営業部長たちが訝しげな視線を向けていた。


「浦部さん、板谷社長とは面識があるのかい?」

営業部長に尋ねられた。

「あ、あの」

うろたえてしまって、最適な言葉が思い浮かばない。
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